2010年2月8日月曜日

マイケル・ムーア監督「キャピタリズム」

「キャピタリズム」にはサブタイトルがあって、「マネーは踊る」となっている。配給はショウゲート。東芝エンタテインメントから商号変更して、博報堂DYメディアパートナーズの完全子会社になった会社のようだ。邦題をつけるのは難しいのだろうか。公開からしばらくたって観たが、劇場は満員だった。しかも客層はおとな世代。マネーは踊るっていう話が主題ではなく、原題はサブタイトルが「ア・ラブ・ストーリー」なわけであり、もう少しセンスの感じるタイトルにしても良さそうだ。このあたりに時代の空気を読む努力を怠る業界体質、というべきか、映画宣伝独特の「かたい題名だと人来ないし」みたいな目線を感じてしまう。

マイケル・ムーアの作風はいろいろな映像をミックスして、本人が突撃していく、というパターンで、今回もそうなのだが少々飽きてきた感は否めない。話も何となく行ったり来たりする。NHKがマネー資本主義のドキュメンタリーで数学を学んだエリートたちが金融工学を開発していた話を紹介したことがあったが今回の作品にも入っていた。何かがおかしい、という話は例えばパイロットの薄給や生活費のためのアルバイトで疲れきって事故につながること、失業に直面する人々の挿話などと織り交ぜて、危機感の薄い政治や当局者に目線が向けられている。

自分の意識を高めることやきっかけになる作品になっている。個人的には株式相場の下落につながった米議会の法案審議のくだり。大幅安という「恐怖」を演出し、公的資金による救済を通したという話はしばし忘れていたことだった。そして実際に議員が演説で、家の退去を命じられても居座れ、と言っていたのも知らなかった。米国の議会をよく聞いてみるとこうした熱いものを打ち出す議員がいるのだと感じた。

仕事だから、と家を立ち退かせ、ドアに板を打ち付ける人。金を返さないのが悪い、働いた結果稼いで何が悪い。そうした社会の断面を見せてもらいながら、そういう姿を後追いしている日本のことを考えた。

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