2011年1月1日土曜日

NHK 第61回紅白歌合戦 その個人的批評

伝統の音楽番組、紅白。歌手の歌をじっくり聴かせようとする演出は感じられたが、やはり最近のNHKに感じる「力み」「自己満足」が垣間見える内容だった。それは司会の選出からしてうかがえる。結局、きちんとした指摘や批判をまともに受けずに進んでいるタレントや女優を使うがゆえに、緩く生温かい気持ち悪さが矯正されないまま流されてしまうのだ。

まず力量を見せた歌手を絶賛しておきたい。
・クミコ:歌詞を大切にしながら抑揚をつける実力で歌いきった。折鶴をあしらった衣装、歌唱力に強い印象を与えた。
・HY:家族のつながり、平和への願いをストレートに表現した。沖縄の風土を感じさせる楽曲が良かった。

このほかはやや水をあけられる感じだが、石川さゆり「天城越え」、いきものがかり「ありがとう」、坂本冬美「また君に恋してる」、加山雄三「若大将50年 スペシャルメドレー」は印象の残る歌だった。小林幸子も会場を沸かせる衣装で楽しませていた。

ただ、軽量化というべきか、伝統の音楽番組という割には薄い紅白に成り下がっているのは否めない。それは司会の責任が大きい。やはりアイドルグループ「嵐」に気を使いすぎているのが完全に裏目に出ている。5人がひっきりなしに喋るため、歌手の歌への想いがきちんと伝えられていない。噛んだことも笑ってごまかしたり、特別ゲストだった熊倉一雄への気配りが何一つできてない。審査員の野口聡一氏やさかなクンの話をきちんと聞かないあたり、無礼を笑いと勘違いしている底の浅さが露呈し、何とも不快な司会ぶりだった。さらにはSMAPの木村拓哉。審査員席に座り、野口氏の話をきちんと聞かずドライアイスの白煙を息で吹き消していた様はひどすぎる。人間としてどういう神経をしているのか疑いたくなる場面だった。

松下奈緒も司会の任は荷が重すぎたのだろうか。声色を意識的に変えて曲紹介するので「うまくしゃべっている自分」に酔いしれる気分を感じてしまった。司会があまりにも自分を前面に出すと、誰が主役か分からなくなる。人の話を聞いていないがゆえに、話をさえぎる失態もあった。

自分をアピールする司会役が続いて久しい。誰かがきちんと「お前の司会は下手だ」と指摘しないと反省しないのだろう。そういう点でNHKの阿部渉アナウンサーはわきまえた進行ぶりだった。

前宣伝で「見てくれ、見てくれ」とあおり続けたNHK。年末は紅白、と決めているこちらとしてはやはり構成に不満が消えない。昭和にあった歌手と司会の一体感、歌手自身がもっと紅白に誇りを感じていたような雰囲気というのは望むほうが無理かもしれないが、もっと改良の余地がありそうだ。