2010年7月21日水曜日

ビルボード東京 「シーナ・イーストン 東京公演」

7月20日、日本公演最終日の第1部を見てきました。仕事が終わらず、実際着席して楽しんだのは「ユア・アイズ・オンリー」から。2007年1月だったか、東京コットンクラブでの公演以降、基本的に同じバンド構成のようで、フィリップ・イングラムさんも一緒でした。

ややハスキーがかった声でしたが力強さは健在。英語がよく聞き取れず、残念なのですが「若いときは世界を征服できるって考えてしまうものだけど、年を重ねてみるとそれはそれでいいものだ」というような話をして自分を力づけてくれる曲として知らない歌(バラード)を披露しました。

その後は「モーニングトレイン(9to5)」。ドラムのリズムが力強く、ライトも黄色や青などカラフルなステージング。サビカラ繰り返しへつながる高音部分もよく出ていました。これならオリジナルアルバム、まだまだ現役でいける!と素直に思いました。いったんステージからはけて、アンコールの声に促され「モダンガール」。もっと聞いていたい、という余韻のままステージは終わりました。

胸躍る興奮、という感覚とは違うけれど、あたたかさがしみ込んでくる内容でした。ネットで調べてみると今回のセットリストには80年代を沸かせた「ストラット」「シュガー・ウォールズ」「テレフォン」「愛・ひととき」「ラヴァー・イン・ミー」も披露したようですが、これは前回、前々回のクラブハウスツアーと同じだったようです。

う~ん、今の流行とは違うのでしょうが、オリジナルをコンスタントにリリースできる実力はあると思うのですけれど・・・。75分程度のショウもいいのですが、やはり89年11月の渋谷公会堂が強い印象にあるだけにもっと聞き込みたい、と思います。当時は「ラヴァー・イン・ミー」の大ヒットを引っさげての来日だったので同アルバムから披露しましたがチャーミングなダンスもまじえた「ノー・ディポジット・ノー・リターン」や「ワン・ラヴ」は今でも鮮やかに記憶に蘇ります。

今回はやらなかったようですが「哀しみ色に染めて」や「愛にDO IT」、「世界中のクリスマス」、「マジック・オブ・ラヴ」といったファンならついてこれる曲も披露してもらいたいな、と思います。ヒット中心の構成はいかにも王道すぎるぞ、という気がしないでもないのですが、ファンとしては元気で来日してくれるだけでもありがたい、という心境。正直、六本木に行くまでは意外性がなければ今回はいいかな、などという気持ちに傾きそうになっていたのも事実でして、結果は行って正解だったのだけど、次にはもっとディープなシーナの世界を堪能したいと思います。情熱的な「フォロー・マイ・レインボー」、80年代の独特の香り漂う「ベスト・ケプト・マン」、プリンス作で新境地というイメージだった「101」、バラードアルバムで成長を感じさせた「ラスト・トゥ・ノウ」、聞きたい曲はいろいろあります。

MCで人生を語ったところに、シーナの年輪を感じました。だからこそ歌える曲もありそうです。レコード会社との契約、という時代ではなくなりつつあるのかもしれませんが、ショービジネスで鍛えられ、そして現役で歌い続けているシーナの今を感じたいと思いました。

2010年7月19日月曜日

日本テレビ「NEWS ZERO」

もはや報道番組というよりも、ニュース娯楽ショーの体裁である。背景に音楽をつけ、集中豪雨のニュースを伝える。番組のサイトにある動画コーナーでは放送局の出資するアニメーションを無邪気にキャスターが語り合っている。もちろん宣伝だ。こういう娯楽化した報道番組を批判すること自体、もう陳腐な気がしてくるが、そしてこういう番組が意外に視聴率を稼いでしまったりするのでため息をついてしまう。そして製作者側が「どうせ視聴者はバカだからこういう単純化して、楽しい話題で押していけばいい」などと多分考えているんだろうな、というのが想像できてしまう番組だ。

それなりに人生の辛酸をなめる経験をしているのかもしれない。視聴者の見えないところで血のにじむ努力をしているのかもしれない。それにしても作りが軽いのだ。そして報道が軽くていいのか、という疑問が抜け出せず、「ああ、見てしまった」という思いを感じながらこの番組を眺めることになる。

1日の動きを時間ごとの刻みで見せてくれる。午前にこういう話題があったのだ、と整理することができるのはありがたい。気がつくと軽快な音楽が背景に流れている。それが天災によって命が失われた話題であっても、だ。こういう配慮のない伝え方はやめにしないか、と誰も言わないのだろうか。

先日は村尾信尚キャスターが英国大使館で英国の外相をインタビューしていた。「“英首相の右腕” 英 ヘイグ外相×村尾信尚」というタイトルがウェブで紹介されている。VS、というには程遠い、「僕は英国の外務大臣に会ってきた」というだけの内容だった。日本の印象を尋ね、英国での連立政権の経験から菅に対するアドバイスは何か、と質問する。中国の経済成長と日英の役割、という話題でも「同じ島国で民主主義国家である」という誰でも言いそうな結論にとどまってそれで笑顔で締めくくっている。

日本の政治は英国のクエスチョンタイムを参考に党首討論を入れている。参考にした政治システムのはずが、二大政党の国民による信頼が揺らぎ連立を組まざるを得なくなっている英国のいまをどうして斬り込まないのか。「二大政党に対する国民の信頼がなぜ揺らいだとみているか」と聞けばいいはずだ。そして「国債の利回りが急伸した数ヶ月前の動きを見ると、財政赤字の拡大は危ういはずだが、日本も同じ問題を抱えている。この局面をどうすべきなのか」と尋ねて欲しい、と思ってしまう。英国の消費税引き上げについて突っ込んでもいい。

結局、そういう問題意識を持つ人々はこうした番組を見ないのだ。「だって日テレに期待したってねえ」ということなのかもしれない。本当に知りたい人は自分で調べ、CSでBBCを見て、ウェブでFTを読むのかもしれない。すると、ここでこうして悪態をついていても仕方ないのだろう。報道娯楽、なのだから。ただどうしてもこだわりたいのは報道が娯楽であっていいのか、という点だ。報道に携わるなら、いま伝えるべきことは何か常に研ぎ澄ます気構えが必要かもしれない。そこが誰でも情報発信できる時代の、「誰でも」でないレベルを保証すると信じたいのだ。