2010年1月23日土曜日

東映配給「今度は愛妻家」

薬師丸ひろ子の映画、という味わいの作品だ。2時間を超す映画でありながら飽きさせない。題材はありふれているような気がするが、監督の狙いの1つであろう「役者で魅せる」という映画に仕上がった。伏線はいろいろ描かれている。差し出されたお茶が減っていない。旅行に行っていたり、しばらく姿を消したり。そうした伏線が最後にきてつながるという展開だ。ファンタジー、それは物語の世界。薬師丸ひろ子演じる妻の可愛らしさや無邪気さが、豊川悦司演じる主人公の男の身勝手さもあいまって、印象的に描かれている。

石橋蓮司の存在感で、作品が新たに引き締まる。ベテランはここぞという時に期待通りの安定感をみせてくれる。若者もその若さが味わいを出していて、主人公夫婦を引き立たせている。

人はなぜ結婚するのだろう。単純に「好き」という感情が結びつけているのかもしれない。そしてそこから理想が膨らみ、現実が続くうちにすれ違っていく。つまらない日常に横たわっている心地よさや楽しさ。手放したくないという思いすらも気がつかずにいるという毎日。

どうしようもなく、離れていかざるを得ない状況。それは受け入れられない、そんな現実は嫌だと思っても抵抗できない運命がある。だからこそ人とのかかわりは大事にしていく必要があるのだろう。

映画作品として、テレビにありがちな軽量感とは異なる質感がしっかり出ている。やはり劇場で見たい映画だ。薬師丸ひろ子の新しい代表作が生まれた、と言っていいだろう。

2010年1月9日土曜日

NHK大河ドラマ「龍馬伝」

NHKが大々的に宣伝をしていた今年の大河ドラマ「龍馬伝」を見た。

上級武士と下級武士の間の身分の差を軸に描いた第1回だが、恐らく主人公龍馬の心の軸となる原体験なのだろう。比較的丁寧にこのつらさを描いている印象を持った。同じ人間である、というのに片方は権力を誇示し、片方はののしられさげすまれる、という対立軸はいまも日常で味わうことだ。ドラマを見る場合には主人公の心情に肩入れしながらも、現実の生活で己はどうしているのか、と問いかけてくるものがあった。

主演の福山雅治。俳優として大きな挑戦の機会を得ているが、第1回では気負いは感じられずむしろ淡々と演じている感じだ。香川照之、寺島しのぶらが印象的な演技を見せている。理不尽なことで命を落とし涙する子供の心。身分格差を軸にこうした原体験をきちんと描いていて、福山雅治は抑えた演技で表現していた。

画面を揺らし、ドキュメンタリー風の演出をしている工夫は時に製作者側の意識過剰がドラマの中身を上回ってしまいがちな気がする。ただ明治という時代に乗り出す前夜の人々の「熱」や実話の持つ現実味、そして桂浜での姉弟の剣の打ち合いのラストシーンで描かれる心情が今回は演出意識を凌駕していた。次を期待させる第1話になったとみている。

はじめに

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